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プレスリリース「平成11年12月24日 日刊工業新聞」

わが社の戦略 104
産廃を無焼成ブロック化
全国に拠点設け地域循環社会に貢献

亀井製陶(岐阜県土岐郡笠原町1258、亀井宏明社長、0572・43・3511)は汚泥やスラグ、焼却灰などの産業廃棄物を原料に、押し出し成形による無焼成のリサイクルブロック「スクラッチシリーズ」を生産している。当初は地元産業である窯業の廃棄物のリサイクルが目的だったが、他業種の廃棄物も受け入れることでブロックの販売先を拡大している。

きっかけは亀井社長が委員だった笠原町産廃対策協議会。町のゴミ処分場が満杯になるため、主に窯業廃棄物の解決方法を探った。廃棄物を用いたブロックを試作、市場性を調査した。この活動を生かすため、単独で研究も開始。「ブロックの市場を広げるには、廃棄物の受け入れ先も広げる必要がある」(亀井社長)と、窯業以外の産業廃棄物も受け入れていくことにした。

入り口を広げるとともに、無焼成で製造することにした。「焼成では産廃含有率は単一の種類で50%がやっと。歩留まりも悪い。無焼成なら複数の種類でも 80%にできる」(同)。原料の水分が高くてもできる湿式製法の押し出し成型なら強度上問題ない。原料の前処理が不要でコスト低減できるのも大きな利点だ。

96年8月にはリサイクルブロック販売の子会社、愛岐アクトロンを同社内に設立。本業のタイルは流通経路が複雑になっており、直販ルートを確立するため製販を分離した。「商品である以上、競争の場に自ら持ち込んでいく必要があった」(同)とこのブロックにかける思いは熱い。

97年から本格稼働、今では月間1万m2とフル生産している。実際は96年に設備を導入し生産を始めたが、試験機と実機では違いが多く、1年間は鳴かず飛ばずだった。薬品の量や投入するタイミングが理論通りにいかないことが多く、これまで150回以上も試行錯誤を繰り返した。その結果、現在は大手企業の廃棄物を受け入れるまでに信頼を得た。

今後は地域循環社会に貢献するのが目標。「地域で出るゴミはその地域で処理するのが本来の姿」(同)であり、現地の企業とも協力して全国に生産拠点を設けていく考えだ。

また、これまでセメントブロックに利用できなかった下水道汚泥の焼却灰の大量使用について研究を進める。ブロックの販売は環境庁のほかに、ホームセンターも開拓、消費者に直接訴えていく構え。

“記者の目”安全性のPRを

岐阜県東濃地方にある笠原町は“美濃焼”で知られる。ここで大量に出る窯業廃棄物を主に、他の産廃も受け入れてブロックを普及させてきた。全国に広げるため、これまで扱っていない下水汚泥なども使用していく方向だが、実際にどの程度使えるのか再び試行錯誤することになろう。また、こうした廃棄物を利用した製品の安全性などをしっかり伝えることが、販売先拡大につながるに違いない。(名古屋・市川 哲寛)

(平成11年12月24日 日刊工業新聞)

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